みすゞさんの詩夕顔 お空の星が 夕顔に、 さびしかないの、と ききました。 お乳のいろの 夕顔は、 さびしかないわ、と いひました。 お空の星は それっきり、 すましてキラキラ ひかります。 さびしくなった 夕顔は、 だんだん下を むきました。 *-----*-----*-----*-----*-----*-----* 夕顔 蝉もなかない くれがたに、 ひとつ、ひとつ、 ただひとつ、 キリリ、キリリと ねぢをとく、 みどりのつぼみ ただひとつ。 おお、神さまはいま このなかに。 *-----*-----*-----*-----*-----*-----* 不思議 私は不思議でたまらない、 黒い雲からふる雨が、 銀にひかってゐることが。 私は不思議でたまらない、 青い桑の葉たべてゐる、 蚕が白くなることが。 私は不思議でたまらない、 たれもいぢらぬ夕顔が、 ひとりでぱらりと開くのが。 私は不思議でたまらない、 誰にきいても笑ってて、 あたりまへだ、といふことが。 |